2025.03.26
薬剤師の知識
心不全療養指導士とは?資格のメリットや取得方法を徹底解説!
目次
こんにちは!なの花薬局の岡本です。
高齢化社会の進行に伴い、心不全の患者さまが急増している昨今、「心不全パンデミック」という言葉も耳にするようになりました。
2025年現在、約100万人いると推計されている心不全患者数は、超高齢化の進行により少なくとも2035年までは増え続けると予測されており、その予防や適切な療養指導ができる専門家の需要が高まっています。
そこで注目されているのが「心不全療養指導士」という資格です。
今回のコラムでは、心不全療養指導士とは何か、資格取得のメリット、そして取得方法までを詳しく解説します。
薬剤師としてのキャリアアップを考えている方や、心不全患者さまのケアに携わる機会が多い方は、ぜひ参考にしてください。
心不全療養指導士とは?役割や資格の概要を解説
心不全療養指導士は、心不全の発症・重症化予防のための療養指導に必要な基本的知識および技能など資質の向上を目的として、2021年に日本循環器学会によって創設された資格です。
心不全は長期にわたる治療や再入院が多い疾病であり、患者さまのQOL(Quality of life/生活の質)に悪影響を及ぼしやすい特徴があります。
そのため、治療や看護に当たる人の専門的で継続的なサポートが重要となります。
心不全療養指導士は、病院だけでなく在宅医療を含む地域全体で活動し、チーム医療を推進することで、患者の再入院予防とQOL改善に貢献します。
心不全療養指導士に求められる主な役割
心不全療養指導士には、以下の5つの役割が求められています。
- 1.心不全の発症・進展の予防の重要性を理解し、その予防や啓発のための活動に参画することができる
- 2.心不全の概念や病態、検査、治療について理解し、それをもとに病状などを把握することができる
- 3.心不全の進展ステージに応じた予防・治療を理解し、基本的かつ包括的な療養指導を実施することができる
- 4.医療機関あるいは地域での心不全に対する診療において、医師や他の医療専門職と円滑に連携し、チーム医療の推進に貢献することができる
- 5.心不全患者に対する意思決定支援と緩和ケアに関する基本的知識を有している
心不全療養指導士は単に医療知識を持つだけでなく、患者さまやご家族に寄り添い、多職種の医療従事者と連携しながら、心不全診療の質の向上に貢献することが期待されています。
心不全療養指導士資格取得のメリット
薬剤師が心不全療養指導士の資格を取得するメリットとしては、主に下の4つが挙げられます。
循環器領域でのスキルアップにつながる
心不全療養指導士の資格取得は、循環器領域で働く薬剤師にとって、専門知識と指導技術を体系的に習得できる絶好の機会です。
試験準備として、患者さまの症例報告書を作成することで、学びを深めることができます。
実際の臨床経験と学習内容が結びつきやすくなることで、より実践的な知識が身につきます。
患者さま・ご家族のQOL向上のための関わりができる
心不全の患者さまは、症状が変動しやすく管理が難しかったり、合併症が出てしまったりするほか、塩分制限や服薬管理など自己管理が必要といったことから、再入院を繰り返してしまう傾向にあります。
入退院の繰り返しは、患者さまご本人だけでなく、ご家族にとっても大きな負担となります。
心不全療養指導士の学びは、単なる知識の習得にとどまりません。
患者さまの心のケア、季節ごとの生活指導、そして旅行時の服薬サポートまで、患者さまの人生に深く関わるための実践的なスキルを磨くことができます。
また、患者さま一人ひとりの状況に合わせた、きめ細やかなアドバイスをすることが可能に。
患者さまとそのご家族が、少しでも穏やかな日々を送れるようにサポートできます。
多職種チームや地域での連携に貢献できる
治療が長期にわたることの多い心不全の患者さまのサポートでは、チームや在宅医療に関わる職種との連携が重要です。
心不全療養指導士は専門的な知識と技術を生かし、チーム医療の質向上に貢献できます。
多職種と連携し、患者さまにとって最適な医療を提供することが可能になるでしょう。
医療負荷の増大を抑えることにつながる
心不全は加齢性疾患といわれており、高齢化社会の日本において、患者数が増えていくことは避けられません。
患者数の増加は、医療負荷の増大に比例します。
それを防ぐためには、心不全の予防と啓発に力を入れることが大切。
心不全療養指導士は、心不全の専門家として心不全の予防や啓発のための活動に参画することもできます。
薬剤師のキャリアプランについてさらに詳しく知りたい方は、「薬剤師のキャリアプランとは?プランの立て方やパターンをご紹介」もぜひご覧ください。
心不全療養指導士になるには?資格取得の流れ
心不全療養指導士になるための流れについて解説します。
受験資格から試験内容、費用までを確認していきましょう。
心不全療養指導士の受験資格
心不全療養指導士の認定試験を受けるためには、以下の条件を満たす必要があります。
- 特定の国家資格を有していること(薬剤師、看護師、保健師、理学療法士、作業療法士、管理栄養士、公認心理師、臨床工学技士、歯科衛生士、社会福祉士のいずれか)
- 日本循環器学会の会員であること(正会員または準会員)
- 現在、心不全療養指導に従事していること
- 受験者用eラーニング講習を受講し、修了証を取得していること
- 症例報告書5例を不備なく記載し提出していること
- 申請書類を不備なく記載・提出し、受験料を納めていること
なお、上記の国家資格に該当しない医療専門職の方が受験する場合は、学会専門医の推薦が必要となります。
資格取得までの流れと試験内容
心不全療養指導士の資格取得までの主な流れは以下の通りです。
- 1.日本循環器学会に入会する(4月以降)
- 2.eラーニングを受講する
- 3.症例報告書5例を作成する
- 4.オンライン申請を行う(6~8月頃)
- 5.書類審査を受ける
- 6.認定試験を受験する(12月)
- 7.合格発表・資格取得(翌年3月)
認定試験はマークシート形式で、試験時間は2時間です。
試験会場は全国の都道府県ごとに設置されます。
試験はeラーニングのカリキュラムから出題されますので、しっかり準備をしていきましょう。
心不全療養指導士の取得にかかる費用と合格率
心不全療養指導士の取得には、以下の費用がかかります。
- 日本循環器学会入会費:2,000円
- 日本循環器学会年会費:正会員15,000円/準会員8,000円
- eラーニング受講費用:5,000円
- 受験料(審査料):15,000円
このほか、公式テキスト「心不全療養指導士認定試験ガイドブック」の購入も推奨されています。
合計すると、少なくとも34,000円程度の費用がかかる計算になります。
直近の合格率は以下の通りです。
- 2020年度:89.49%
- 2021年度:86.15%
- 2022年度:91.76%
- 2023年度:70.39%
合格率は比較的高い水準を維持していますが、5つの症例報告書の作成など、事前の準備に時間がかかるという点ではハードルが高い面もあります。
しっかりと計画を立てて準備を進めることが大切です。
薬剤師が取得できるほかの資格についても知りたい方は、「薬剤師の資格にはどんな種類がある?資格取得のメリットもご紹介!」をチェックしてみてください。
なの花薬局では、独自の教育制度「コミュニティ ファーマシスト ステップ制度(CP Step制度)」で、薬剤師の資格取得をサポートしています。
【臨床】【研修】【研究】【資格】の4種類の実績を積み重ねて、ステップアップしていける制度です。
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また、なの花薬局では専門知識を生かせる「心不全」の領域別チームが新たに立ち上がり、症例検討や研修会の開催、資格取得の流れの共有などを行なっております。
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心不全療養指導士とは心不全の療養に関わる需要の高い資格
心不全療養指導士は、心不全の発症・重症化予防のための療養指導に必要な知識や技能を証明する資格です。
心不全パンデミックと呼ばれるほど患者数が増加している現在、この資格の需要と重要性はますます高まっています。
資格取得のメリットには、循環器領域でのスキルアップにつながること、患者さまやご家族のQOL向上に貢献できること、多職種チームや地域での連携がしやすくなること、医療負荷の増大を抑えることにつながることが挙げられます。
資格取得には、日本循環器学会への入会やeラーニングの受講、症例報告書の作成などのステップが必要ですが、合格率は高く、しっかり準備すれば十分に取得可能な資格です。
薬剤師として専門性を高め、患者さまにより質の高いケアを提供したいと考えている方は、ぜひ心不全療養指導士の取得を検討してみてはいかがでしょうか。
なの花薬局では、薬剤師の就活に役立つ情報を随時発信しています。
薬剤師として理想の働き方を目指す方は、ぜひチェックしてみてくださいね!