2023.02.02
薬剤師の知識
ポリファーマシーとは?原因や問題点を確認!予防・対策もご紹介
目次
こんにちは!なの花薬局の神森です。
高齢化が進む現代日本で関心が高まっている問題のひとつ、「ポリファーマシー」をご存じでしょうか?
ポリファーマシーとは、多くの薬を服用することで有害事象発生などのリスクがある状態のことです。
今回のコラムでは、ポリファーマシーについてその意味や原因、問題点などを解説します。
ポリファーマシーを予防するための対策なども一緒に確認していきましょう。
「ポリファーマシー」とは?
ポリファーマシーとは、多種類の薬の服用により、副作用などの有害事象につながる可能性がある状態のことです。
「poly(複数)」と「pharmacy(調剤)」を合わせてつくられた言葉です。
単純にたくさんの薬を飲んでいることが悪いのではなく、不必要・不適当な薬が処方されていることによる副作用の発生や、薬の飲み残し・飲み忘れなどの服薬過誤、医療費の増加などが問題視されています。
「何種類以上の薬を服用していたらポリファーマシー」という具体的な定義はありませんが、有害事象が発生するリスクが高まるといわれる5~6種類以上の薬を併用している場合に、ポリファーマシーとされることが一般的です。
現在、日本では高齢者の約半数がポリファーマシーの状態といわれています。
ポリファーマシーが起こる原因を確認
ポリファーマシーは特に高齢者に多くみられる問題なのですが、その理由として大きなものは、高齢化が進み、複数の慢性疾患を抱える高齢者が増えたことです。
高齢になると生活習慣病などの慢性疾患を患うケースが増えていきます。
加齢による不調や病気は完治しにくいので薬を飲み続けることになりますし、高齢になるほど不調や疾患が増え、病気の数だけ薬の種類が増えていってしまうのです。
病気ごとに別の病院に通ってそれぞれで薬を処方されていると、医師が薬の総数や内容を把握管理できない可能性もあります。
また、薬による副作用を抑えるために新たな薬を処方し、その繰り返しで薬の種類が増えてしまう「処方カスケード」もポリファーマシーにつながってしまうといわれています。
ポリファーマシーの問題点を知ろう
ポリファーマシーの問題点は、患者さまへの悪影響と国民医療費の増大の2点です。
健康への悪影響やQOLの低下
どのような薬でも副作用が起こる可能性はありますが、服用する薬の種類が増えればその量や飲み合わせによって、重大な有害事象が発生するリスクが高くなってしまいます。
ポリファーマシーによる有害事象は、軽いめまいやふらつきから肝機能障害や低血糖までとさまざまで、重篤なものだと死亡につながるものも。
めまいなどの軽いものでも、それにより転倒、骨折をして、その後のQOL(クオリティオブライフ:生活の質)に影響してしまうケースもあります。
また、複数の薬を併用していると飲み忘れや飲み間違いもしやすくなり、薬を正しく服用できないことでの健康被害にもつながってしまうでしょう。
国民医療費の増大
高齢化社会において、医療費の増大は大きな社会問題のひとつです。
厚生労働省による「令和3年度 医療費の動向」によると、令和3年(2021年)度の調剤医療費は7.8兆円で医療費全体の17.5%を占めています。
過去の動向をみると、10年前の平成23年(2011年)度は6.6兆円(全体の17.4%)、20年前の平成12年(2001年)度は3.3兆円(全体の10.7%)となっており、この20年で調剤医療費は倍以上となり、医療費全体の中で占める割合も増加しています。
日本の医療制度では、医療費の実費のうち3割を患者さまが窓口で支払い、残りの7割を国が負担する形になっています。
※負担割合などは医療制度によって異なります。
医療費がますます増大していくと、患者さまの負担割合や国民健康保険料を引き上げることも検討される可能性があるでしょう。
ポリファーマシーの予防・対策をご紹介
ポリファーマシーを防ぐために大切なことは、患者さまの服用しているすべての薬を把握し、正しく服用管理することです。
患者さまが複数の病院にかかっている場合では、かかりつけ薬局やかかりつけ薬剤師をつくることで、調剤や服薬管理を集約し、服薬情報の適切な把握・管理を行っていくことができるでしょう。
かかりつけ薬局やかかりつけ薬剤師が服薬状況の把握することにより、ご家族をはじめ、介護施設、医療機関といった関係する多職種などとも情報を共有し、服薬のサポートや多剤・重複服薬を見直すといった処方の適正化も行います。
多剤処方を避けるための方法としては、下記のような点の見直しが推奨されており、必要に応じて減薬の提案なども行います。
- 予防薬のエビデンスは妥当か
- 対症療法は有効か
- 薬物療法以外の手段
- 優先順位
※参考:日本老年医学会「高齢者の安全な薬物療法 ガイドライン2015」 p.15
かかりつけ薬局やかかりつけ薬剤師は、そのような服薬情報の一元管理を担うことを期待されています。
かかりつけ薬局を作るのが難しい場合は、お薬手帳を活用するのも方法のひとつでしょう。
「かかりつけ薬剤師になるための要件や条件をチェック!メリットもご紹介」では、かかりつけ薬剤師の役割やメリットなどを詳しくご紹介していますのでぜひご覧ください。
なの花薬局では、「地域薬局」として地域ごとのニーズに合わせた店舗形態を展開。
複数の医療機関が集まる医療モール内などにも店舗を置き、患者さまの通院時間や待ち時間の負担軽減のほか、服薬管理の集約など質の高い医療サービス提供で地域医療に貢献しています。
ポリファーマシーとは有害事象のリスクがある多剤服用状態のこと
ポリファーマシーとは、不必要、不適当なたくさんの薬を服用することによって、有害事象発生などのリスクがある状態のこと。
一般的には5~6種類以上の薬を服用している状態を、ポリファーマシーということが多いです。
ポリファーマシーの原因として大きなものは、高齢化です。
高齢になるほど疾患が増え、病気の数だけ薬の種類も増えてしまいます。
薬の副作用による不調に対して別の薬を処方するという「処方カスケード」もポリファーマシーを形成してしまうこともあります。
ポリファーマシーの問題点は、多剤服用による健康への悪影響やQOLの低下、そして国民医療費の増大です。
どんな薬でも副作用があるものですが、たくさんの種類の薬を飲むことによって有害事象が発生するリスクが高まってしまいます。
ポリファーマシーを防ぐためには、服用している薬の適切な把握・管理が重要です。
患者さまが複数の病院に通っている場合でも、かかりつけ薬局やかかりつけ薬剤師をつくり調剤を集約することで、適切な服薬管理を受けることができます。
なの花薬局では、薬剤師の就活に役立つ情報を随時発信しています。
薬剤師を目指す方や薬剤師の働き方についてお悩みがある方は、ぜひ参考にしてみてくださいね!