2021.10.18
薬剤師の知識
薬剤師の資格にはどんな種類がある?資格取得のメリットもご紹介!
目次
こんにちは、なの花薬局地域薬局事業部の錦戸です。
専門性の高い知識や技術を必要とする薬剤師。
薬剤師には、さらに高度な知識と技術を身につけていることを証明するための資格がたくさんあります。
今回は、認定薬剤師、専門薬剤師など、薬剤師のキャリアアップに役立つ資格をご紹介します。
これから薬剤師を目指そうとしている方も、ぜひ参考にしてみてくださいね。
特に、薬局で目指せる資格を中心にご紹介していきます!
薬剤師の資格、認定薬剤師・専門薬剤師とは?取得のメリットも解説
資格取得には、研修参加(単位取得)や試験合格とともに、特定の専門分野において高い知識や技術を持ち、質の高い業務を行うことも重要となります。
薬剤師の資格を大きく分けると「認定薬剤師」と「専門薬剤師」があります。
まずは認定薬剤師を取得して社内外への指導的役割や、研究・症例報告などを行い、その後試験に合格して晴れて専門薬剤師になるケースが多いです。
認定薬剤師・専門薬剤師の中でも、さらにたくさんの種類があるため、どれを取るべきか悩んでしまう方もいるでしょう。
どの資格を取るかは、難易度で選ぶよりも「薬剤師として何をしたいか」を特に興味のある分野で数年実務を経験しながら考え、興味がある学会を選ぶことをおすすめします。
では、「認定薬剤師」と「専門薬剤師」それぞれの内容についてや、取得をするメリットについて詳しくご紹介していきましょう。
認定薬剤師とは
認定薬剤師とは「認定薬剤師制度」による一定期間の研修や実技を通して、定められた単位を取得し、最新の知識や技術を有していると認められた薬剤師のことです。
常に、自己研鑽に努めていて、時代に合わせた薬学ケアができる薬剤師であることの証明にもなります。
認定薬剤師制度では、各分野における専門的な研修も受けることができます。
例えば、薬剤師認定制度認証機構(CPC)では、職能の向上を目的とする「生涯研修」、さらに焦点をしぼった特定分野・領域について学習できる「特定領域」、特定の疾患や診療領域等を対象にチーム医療や地域医療等に貢献する「専門薬剤師」などの認定制度が用意されています。
参考:薬剤師認定制度認証機構,Council on Pharmacists Credentials(CPC) (cpc-j.org)
専門薬剤師とは
専門薬剤師は「特定の専門分野において、薬物療法などに関する十分な知識と技術を有する者」として、日本病院薬剤師会をはじめとする各団体から認定を受けた薬剤師のことです。
医師や看護師と連携し、実際に病棟や手術室、ICUなどに出向いて、医療チームの一員として薬物療法の面から患者さまをサポートします。
また、専門分野の新薬開発や、治療方法の研究などにも携わることが可能です。
患者さまに安全で適切な治療効果を提供するだけでなく、医療の安全対策や医師の負担を軽減するといった面でも重要視されています。
専門薬剤師になるための前提として、まず各団体から認定を受けた「認定薬剤師」であることは必須です。
その上で、一定期間以上にわたり専門分野の薬物療法に従事していたり、団体の定める講習会などで所定の単位を履修していたり、実績を積みながら学会で研究論文や学術論文を発表するなど、定められた条件を満たすと認定試験を受けて資格を得ることができます。
認定薬剤師・専門薬剤師になるメリットとは
資格取得には、学び続ける努力と忍耐力、継続力が必要です。
しかし、専門分野に特化することでやりがいを感じられたり、最新情報に詳しくなれたりと、薬の専門家としての仕事のやりがいやキャリアの充実にもつながるでしょう。
また、専門薬剤師まで到達ができると、専門分野のスペシャリストとして医療チームの一員としての活躍も期待できます。
そのほか、こんなメリットもあります。
医療従事者や患者さまからより信頼が得られる
最新の専門的な知識・技術を身につけることで、薬の専門家として助言・サポートが可能となります。
その結果、薬剤師としての価値が上がるだけでなく、個人として認識されることが増えることで、医師などの医療従事者や患者さまからの信頼をより得られます。
薬剤師としてスキルアップできる・キャリアの幅が広がる
一定の条件をクリアして「かかりつけ薬剤師」になるなど、薬剤師としての道が広がります。
分野によっては、さらに専門性の高い専門薬剤師へとキャリアアップできる可能性も。
また、薬の専門家として明確な目標を持つことで、仕事へのやりがいを得られたり、モチベーションアップにもつながります。
身につけた専門的な知識や技術、資格を活かして、社内外でもキャリアアップやチャンスが増えます。
最新の薬学や技術を効率的に習得できる
単位取得のために参加する研修や学会などから常に最新の薬学情報が習得できます。
プログラムに沿って学んでいくため、偏りなく効率的に学べます。
年収アップつながる可能性がある
就業先によっては、認定証明が昇給に考慮されたり、資格手当がもらえたりすることがあり、年収アップにつながる可能性が高まります。
人脈が広がる
研修などへの参加を通して人脈が広がります。
社外の薬剤師などとも情報交換ができるので、より豊富な知識を得ることもできます。
認定薬剤師が取得可能な資格をご紹介
代表的な認定薬剤師の種類についてご紹介していきます。
認定薬剤師の資格の種類
・外来がん治療認定薬剤師(日本臨床腫瘍薬学会)
外来がん治療を安全に施行、そして地域がん医療において、患者とその家族をサポートできる薬剤師に認定される資格です。
参考:外来がん治療認定薬剤師制度(APACC) - 日本臨床腫瘍薬学会
・緩和薬物療法認定薬剤師(日本緩和医療薬学会)
主にがん治療における緩和ケアチームで、医師・看護師ら他職種と連携し、薬物療法の推進と充実を担います。
2011年に第一回の認定試験が行われて以降、緩和ケアへの社会的関心の高まりとともに、活躍の場も広がっています。
・腎臓病薬物療法認定薬剤師(日本腎臓病薬物療法学会)
透析、腎移植など慢性腎臓病(CKD)診療など、幅広い腎臓に関わる薬物を適正に使用する知識や技術があると認められた薬剤師に認定されます。
※腎臓病薬物療法単位履修修了薬剤師、腎臓病薬物療法認定薬剤師、腎臓病薬物療法専門薬剤師で取得条件がそれぞれ異なります。
参考:腎臓病薬物療法専門薬剤師認定制度 | 日本腎臓病薬物療法学会
・糖尿病薬物療法准認定薬剤師、糖尿病薬物療法認定薬剤師(日本くすりと糖尿病学会)
医師、看護師、栄養士、その他医療従事者とともに、糖尿病療養指導を行う中で年々複雑化する「薬物療法」に関する十分な知識、及び技能を有する薬剤師を養成することを目的とし、設立された資格です。
参考:認定薬剤師制度について | 一般社団法人 日本くすりと糖尿病学会 (jpds.or.jp)
・在宅療養支援認定薬剤師(日本在宅薬学会)
今後ますますの増加が見込まれる在宅患者を支えるべく、患者の立場に沿って、医師・看護師とともに医療チームの一員として活躍されることが期待される薬剤師です。
参考:在宅療養支援認定薬剤師 | 一般社団法人 日本在宅薬学会
・プライマリ・ケア認定薬剤師(日本プライマリ・ケア連合学会)
プライマリ・ケアは、国民の健康や病気、福祉に対して、総合的・継続的な医療を実践しようという概念のことです。
少子高齢社会の中で注目されており、中でも薬剤師は地域医療の担い手、健康相談の窓口などとして期待される存在です。
参考:日本プライマリ・ケア連合学会|認定制度 プライマリ・ケア認定薬剤師制度
・小児薬物療法認定薬剤師(日本薬剤師研修センター)
小児向けの薬物療法について専門的な知識と能力を持ち、小児科の医療チームの一員としての活躍が期待される薬剤師です。
また、患児だけではなく、その保護者に対しても適切な服薬指導を行うことが求められます。
・漢方薬・生薬認定薬剤師(日本薬剤師研修センター)
漢方薬・生薬に関する専門的知識を習得し、患者の体質や症状、病気の種類によって医師に処方を提言したり、服用方法を指示することができます。
・認知症研修認定薬剤師(日本薬局学会)
認知症領域において医薬品に関わる専門的立場から医療・介護・福祉チームの一員として薬物療法に従事します。
また、認知症の患者本人への薬物療法以外にも、患者家族や周囲の人に対し、薬学的視点をふまえた適切な助言および対応が求められます。
・麻薬教育認定薬剤師(日本緩和医療薬学会)
医療用麻薬の適正使用と不正薬物の乱用防止に関する知識を深め、教育や普及活動を行う薬剤師です。
主に、青少年、学校関係者(教職員、保護者等)、患者・家族、医療スタッフなどに正しい知識を得てもらうために活動します。
参考:認定講習会と単位申請|麻薬教育認定薬剤師認定制度|日本緩和医療薬学会
・日本臨床薬理学会認定薬剤師(日本臨床薬理学会)
薬剤師であれば治験コーディネーターとして活躍できますが、本資格の取得者はより専門的な知識を持ち、臨床研究の実施に必要な調整役として活躍することが可能です。
・認定ケアマネジャー(都道府県知事)
介護を必要とする人の課題解決をサポートする仕事で、受験資格を得るには保健・医療・福祉分野で通算5年以上かつ従事日数900日以上の実務経験が必要です。
介護保険法に基づき、要介護者や要支援者、家族などからの相談に応じて要介護者等が心身の状況に応じた適切なサービスを利用できるよう支援します。
・心不全療養指導士(日本循環器学会)
心不全の発症・重症化予防のために必要な基本的知識や技能の向上を目指す資格です。
2021年度に新設された認定制度で、新設の背景には、超高齢社会で心不全患者が増加していることが挙げられます。
心不全患者の症状悪化を防ぎ、生活の質(QOL)の改善を図る役割があります。
病院から在宅まで、幅広く活動します。
・糖尿病療養指導士(日本糖尿病療養指導士認定機構)
糖尿病治療において最も大切な自己管理(療養)を指導する医療スタッフを目指す資格です。
CDEJに認定されることは、糖尿病の臨床における生活指導のエキスパートであることを意味します。
・腎臓病療養指導士(日本腎臓病協会)
標準的なCKD(慢性腎臓病)の保存療法を現場に浸透させることを目的として、職種横断的な、CKD療養指導に関する基本知識を有した人材を育てるための資格です。
対象は看護師・保健師、管理栄養士、薬剤師となっています。
参考:腎臓病療養指導士について | 腎臓病療養指導士制度 | NPO法人 日本腎臓病協会
・NST(栄養サポートチーム)専門療法士(日本静脈経腸栄養学会)
NSTとはNutrition Support Teamの略。
NST(栄養サポートチーム)専門療法士は、主に静脈栄養・経腸栄養を用いた臨床栄養学の知識・技能が求められる資格です。
薬剤師など指定された医療に関する国家資格を取得している方が認定の対象となります。
参考:NST専門療法士認定資格制度 | 日本臨床栄養代謝学会
・腎臓病薬物療法単位履修修了薬剤師(日本腎臓病薬物療法学会)
透析、腎移植、慢性腎臓病(CKD)診療など、幅広い腎臓に関わる薬物を適正に使用する知識や技術があると認められた薬剤師に認定されます。
※腎臓病薬物療法単位履修修了薬剤師、腎臓病薬物療法認定薬剤師、腎臓病薬物療法専門薬剤師で取得条件がそれぞれ異なります。
参考:腎臓病薬物療法専門薬剤師認定制度 | 日本腎臓病薬物療法学会
・公認スポーツファーマシスト(日本アンチドーピング機構(JADA))
最新のアンチ・ドーピングの知識を有する知識があると認められた薬剤師が認定されます。
アンチ・ドーピングの知識を用いて、スポーツ競技者や指導者、スポーツを楽しむすべての人へ薬の正しい使い方などアドバイスを行います。
参考:公認スポーツファーマシスト ~スポーツの価値を護るアンチ・ドーピング活動~
こちらのコラムでもご紹介しています!
スポーツファーマシストの資格を取得するには?役割や仕事の内容もご紹介
また、資格とは少し異なりますが「薬剤師生涯学習達成度確認試験合格(日本薬剤師研修センター)」という薬剤師の研修・学習の達成度を客観的に評価することを目的とした試験もあり、薬剤師の評価基準の一つとして今後重要視されるのではないかとも考えられています。
専門薬剤師が取得可能な資格をご紹介
代表的な専門薬剤師の種類についてご紹介していきます。
専門薬剤師の資格の種類
・医療薬学専門薬剤師(日本医療薬学会)
医療薬学分野における実務経験に基づいた一定水準以上の知識・技能を兼ね備え、さらに学術活動・研究活動の実績を有する薬剤師の輩出を目的としています。
1998年に発足し認定薬剤師の先駆けともなった資格制度です。
参考:日本医療薬学会
・がん専門薬剤師(日本医療薬学会)
2009年に発足された認定制度で、がん領域に関わる薬物療法に一定水準以上の実力を持ち、医療現場で活躍できる薬剤師を養成する目的で発足されました。
「がん専門薬剤師」に関わる資格として、「がん専門薬剤師」の養成に必要な研修を実施する「がん専門薬剤師研修施設」や、指導者資格「がん指導薬剤師」もあります。
参考:日本医療薬学会
・地域薬学ケア専門薬剤師(日本医療薬学会)
2020年1月に新たに作られた資格です。
地域医療や介護福祉において、幅広い薬学ケアに対応することが目的とされています。
高度な薬物療法の知識と技術を有する専門家として、また地域医療・介護領域における薬学ケアの研究者として、地域医療・介護領域の現場での活躍が期待されます。
参考:日本医療薬学会
・医薬品情報専門薬剤師(日本医薬品情報学会)
医薬品情報に関する高い専門知識、技術、倫理観、経験を有する必要があります。
医療施設や企業、行政などに対し、正しい医薬品情報活用の支援を行い、医薬品適正使用を推進する役割を担います。
・外来がん治療専門薬剤師(日本臨床腫瘍薬学会)
現行の外来がん治療認定薬剤師(APACC)を基礎として、薬物療法に関する高度の専門知識を有し、実地で患者に対して服薬指導を行える適切な技能及び態度を有することを必要とする資格です。
さらに、薬局が病院と連携するために必要な実地の業務に関する一定水準以上の知識・経験を有することが必要です。
参考:外来がん治療専門薬剤師制度(BPACC) - 日本臨床腫瘍薬学会
特に注目される「地域薬学ケア専門薬剤師」と「外来がん治療専門薬剤師」
これらの中で特に最近注目されているのが「地域薬学ケア専門薬剤師(がん)」と「外来がん治療専門薬剤師」です。
なぜかと言うと、2021年8月の改正薬機法により「地域連携薬局」「専門医療機関連携薬局」が導入され、「専門医療機関連携薬局」に必要な要件のひとつに、上記の資格者が在籍していることになったためです。
「地域薬学ケア専門薬剤師」になるためには、⽇本医療薬学会の求める次の認定要件を満たさなければいけません。
- 1. 日本国の薬剤師免許を有し、薬剤師として優れた人格と見識を備えていること
- 2. 実務経験を5年以上有すること
- 3. 5年以上継続して⽇本医療薬学会の会員であること
- 4. 日本薬剤師研修センター「研修認定薬剤師」、日本病院薬剤師会「病院薬学認定薬剤師、日本薬剤師会「生涯学習支援システム(JPALS)」「クリニカルラダー5」以上、そのほか日本医療薬学会が認めた認定制度による認定薬剤師のいずれかの認定を受けていること
- 5. 研修施設において、研修ガイドラインに従って地域薬学ケアに関する5年以上の研修歴を有すること(カンファレンスへの参加を含む)
- 6. 別に定めるクレジット5年で50単位以上履修していること
- 7. 薬物療法専門薬剤師集中講義に1回以上参加していること
- 8. 日本医療薬学会の年会に1回以上参加していること
- 9. 自ら薬学的管理をおこなった、5年間の症例報告50症例(4領域以上の疾患)を提出すること
- 10. 医療薬学に関する全国学会あるいは国際学会での発表が2回以上(日本医療薬学会が主催する年会において本人が筆頭発表者となった発表を含む)または論文発表1回(筆頭)
- 11. 専門薬剤師認定試験に合格すること
正式な認定を受けるには、5年もの間ほぼ週1回のペースで病院のカンファレンスに参加しなければいけないので、働きながら認定を目指す薬剤師にとっては少し高いハードルと言えます。
取得までには大変な道のりが待ってはいますが、取得できると社内外活動が活発になり、新たな道が開けてきます。
取得がゴールではなく、スタートです。
超高齢社会となった日本において、地域医療と介護ケアにおける薬剤師の連携は必須となるため、これらの専門知識を持った「地域薬学ケア専門薬剤師」は重宝されることでしょう
医療連携による多職種連携にもつながると思いますので、ぜひ新たな薬剤師としてのスタートを目指してみてくださいね。
ちなみに「かかりつけ薬剤師」に必要な認定薬剤師(日本薬剤師研修センター)は、上述した各種認定薬剤師とは別物ですので注意が必要です。
こちらは4年以内に40単位(最低5単位/年)の研修を受けることで取得できるもので、薬局薬剤師として最低限必要な資格となります。
薬剤師として働き出したら、すぐに取得できるよう積極的に研修を受けてくださいね。
こちらのコラムもぜひ参考にしてください。
かかりつけ薬剤師になるための要件や条件をチェック!メリットもご紹介
薬剤師の資格の種類は将来どうなりたいかをイメージして選定を
薬局における業務形態も、健康サポート機能や地域包括ケアシステムにおける在宅医療、他職種連携などが期待される中、薬剤師はこれまで以上に専門的な資格やスキルが求められます。
薬剤師の資格には「認定薬剤師」と「専門薬剤師」があり、まずは認定薬剤師を取得して経験を積み、その後専門薬剤師の資格を取るという流れが多いです。
認定薬剤師・専門薬剤師の中でも種類は幅広く分かれているため、数年実務を経験しながら「薬剤師として何をしたいか」を考えたうえで選ぶと、今後のキャリアアップを目指すためにも有益でしょう。
薬剤師として自身のスキルの幅を広げるためにも、今回のコラムを参考に資格取得を検討してみてはいかがでしょうか。
なの花薬局の就職サポートコラムでは、薬学生の就活に役立つ情報を随時発信しています。
なの花薬局には、薬剤師としてのスキルアップも繋がる認定資格取得支援制度も完備していますので、ぜひ教育制度についてもチェックしてみてくださいね!